(このシリーズは未完です。今後コンテンツを増やしていきます)
この一連の記事は、大学でこれから熱力学を学ぼうとしている方向けに書かれた、熱力学の基礎的な部分について解説したものになります。
抽象的な考えが多く理解するのが非常に難解な熱力学を、教科書の補足になるようになるべく式を使わずに言葉で解説しました。ただ単に読み物としても面白くなっているのではないかと思います。
ただ、全く式が無いと、ご自身の教科書との対応が無くなったり、むしろ直感的な意味を捉えづらくなるため、入れたほうが分かりやすいと判断した部分には入れるようにしました。
目次
全体の流れは
となるようにするつもりです。最終的には熱力学の集大成と言っても過言ではない「エントロピー」について理解することを目標に、一般的な熱力学の教科書には共通して書かれている部分は網羅しながら読み進められます。
また、それぞれの部分でポイントとなるようなまとめ部分をつくりました。まとめのところはこんな感じになっています。
図とこのまとめ部分のみを眺めていただくだけで、何となく雰囲気が伝わるようにしてあります。
はじめに
では早速、今回は熱力学のさわりの部分を書いていきます。
熱力学は産業革命期に蒸気機関の研究から始まった学問です。しかし、現在の応用範囲はもっと広がっていて、工学だけでなく、化学、情報、環境分野でも使われるようになっています。
このように応用範囲が広がっている理由はエントロピーという概念にあります。エントロピーは、安定性や自由さを扱うときに、とても応用の効く概念です。この側面が化学物質の安定性などを議論するときには欠かせません。ただ、この概念を理解することは初心者にとって最も厳しい壁として立ちはだかってきます。
このシリーズを通して、熱力学初心者の方がエントロピーとはどのようなものなのか、その心をわかるようになってもらえれば幸いです。
まぎらわしいことについて
熱力学と同じような題材を扱う分野に「統計力学」という分野があります。統計力学は分子運動などのミクロな現象から物性などのマクロな現象を説明しようというスタンスです。
熱力学と統計力学を一緒にして、熱統計力学と呼ばれることもあり、両者の適用範囲は非常に似通っていますが、僕の「物理学と何だろうか(今回の内容からは大きくそれ、しかも長いので興味のある人以外は読まなくて良いです)」に対する考え方からいうと、両者は視座が全く違います。
この記事では統計力学の力をなるべく借りずに、純粋な熱力学の視座からエントロピーについて説明したいと思います。
また、語感がエントロピーと似ているエンタルピーという言葉がありますが、全くの別概念です。エントロピーの方がより根本的な量で、エンタルピーは、エントロピーと他の量を数学的に組み合わせることで表すことができます。このシリーズでは主にエントロピーについて扱います。
熱力学の構造
熱力学は四つの基本法則があり、
- 第零法則(熱平衡)
- 第一法則(エネルギー保存則)
- 第二法則(トムソンの原理、エントロピー増大則など)
- 第三法則(ネルンストの定理)
と呼ばれています。第零法則は熱力学が第一から第三で完成した後に、前提として必要となったことからゼロ番目を頂いた感じです。この法則は電磁気学でのマクスウェルの方程式で有名なマクスウェルさんがつけ加えたものです。
さらに、マクスウェルの悪魔という存在を提唱し、それを理論的な道具にして、エントロピーなどの解析を行いました。熱力学と電磁気学をまとめ上げるなんて、まとめ上手なおじさんです。
この記事では第ゼロ→第一→第二の順番で説明していきます。第三法則はほとんど意識されないので、この記事でもふれません。気になる人は教科書を開いてみてください。
まとめ
今回は全体のさわりとして、熱力学には4つの法則があることを確認しました。
次回はまだ本編にはふれず、熱力学の基本的な考え方を一旦掘り下げようと思います。
次の記事:熱力学の視座 - Yukihy Life