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小中一貫校制度に関するQ&A 中教審答申資料の概要と感想

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少し前に、高大接続(大学受験)についての記事を書きましたが、

実は同じ日に中教審は小中一貫校に関しての答申も出しています。一次資料はこちら

子供の発達や学習者の意欲・能力等に応じた柔軟かつ効果的な教育システムの構築について(答申)(中教審第178号):文部科学省

簡単な概要をQ&A方式にしました。最後にちょっとだけ感想を入れています。

 

概要

今回の答申の中で主に書かれていることは

①小中一貫教育の制度化

②大学への飛び入学者を促進させるような制度化

③外国留学生を増加させるための規制緩和

④高等学校専門科から大学へのつながりを強める制度化

です。

一つ一つ詳しく見ていきたいのですが、多くの方に関心があるのは小中一貫校のところだと思うし、記事が長くなってやっかいなので今回は①の小中一貫校のみ見ていきます。

 

Qなぜ小中一貫校にするのか

・最近の学校教育法の改正により、小・中学に共通の義務教育の目標基底が新設された(第21条)から

・H20年の学習指導要領の改訂により、教えるボリュームが増えた。小・中一貫の方が先生も生徒も効率よく教えられるから

・最近の小学生は育ちが早く、昭和時代に作られた6-3体制ではなく、小学校から「興味関心」や「個性への対応」などの、従来ならば中学校段階の指導を早い段階から取り入れる必要があるから

・中学に上がる段階での生活の変化(いわゆる中一ギャップ)によるいじめの増加などを防ぐ

・異学年との交流が増えるので社会環境の変化への対応力がつく

・行政からの支援が行いやすい

 

Q小中一貫教育の現状は?

・現在取組数は1130件(約1割の市町村が行っている)

・やり方は学校によって多様である(ex.教科別に9年間を考える・食育に一貫性を持たせる・合同行事の実施)

・学年の区切りを変えるという学校もある(ex.3割:4-3-2 その他:5-4や4-5 など)

・8割の実施校が小学校に外国語を導入

・中学の先生が小学校で指導する:4割  小・中学校の先生の相互乗り換え:2割

・1人の校長が小・中学校を併任:1割 それぞれの学校の校長がマネジメント:9割

 

Q.成果は?

・学力調査の結果の向上

・学習意欲の向上

・中一ギャップ(中一に上がる段階でいじめや不登校が増えること)の緩和

・コミュニケーション能力の向上

・教員の指導の改善意欲の向上

・評価方法の小中のギャップの縮小

・教員の基礎学力の必要性の関心の高まり

・保護者との連携の強化

 

Q.問題点は?

・9年間の系統性に配慮した指導案作りが難しい

・小・中学合同行事の設定

・先生の打合せ、研修の確保

・先生の力量や活動

・小・中学の移動手段の確保

・転出入者の対応

・小学校高学年によるリーダー性や主体性の育成

・成果や課題の可視化の方法

他にも書いてあったが、学校側の問題がほとんどなので割愛しました。

 

Q.実際にはどんな形の学校ができるの?

制度化としては、小中一貫校のイメージとして、2つの学校の形を用意する予定

①小中一貫教育学校(仮称)…いわゆる皆さんのイメージする小中一貫校(校長は一人)

②小中一貫型小学校・中学校(仮称)…教育課程などは統一するぐらいの弱い連携(各々校長はいる)

定義として詳しく定めることはせず、一定の範囲で設置者の判断を入れることを認める

 

Q.全ての学校を中高一貫校にしていくつもりなの?

そんなことはない。市町村や自治体により状況は様々なので、通常の小・中学校のみを設置することが適切な場合もある。このため、全ての市町村に対して小中一貫校の設置を義務付けたり、既存の小・中学校を廃止し、小中一貫校のみを義務付けることは適当ではない。

 

Q.小中一貫校で6年通った後、普通の中学校に転校できる?

できるようにしていく方針。小中一貫校の小学校段階が終わった者へ、通常の中学校への入学資格を付与する。よって小中一貫校は小学校段階と中学校段階に分け、9年間を終えて小中一貫校の卒業とし、6学年終了からは中学校に入学を認めることが適当。

 

Q.学習指導要領はどうなるの?

新たに独自の指導要領を作る方針はしない。通常の小学校・中学校との接続を可能にするため。

 

Q.それじゃほぼ今までの学校と同じじゃないっすか。何か特別なことはしないの?

確定じゃないけど、小中一貫校の特例として、以下のことを検討するかも

・小中一貫教育の軸となる独自教科の追加

・小中一貫教科など、他の教科に一部変更する

・授業時間を各教科による振り分けを変える

・指導内容(教科など)を小学校・中学校で入れ替える

上のものは児童生徒の負荷にならない程度にする

 

Q.教員免許は小・中分かれてるけどどうなるの?

・迅速な対応を目指すため、新たな免許状は作らない

・原則は小・中の両方の免許を持っている人にやってもらう

・当分の間、どちらか一方の免許をもつことによる適切な指導(小学校免許→小学校内容のみ など)を可能とする

・いづれは、小・中両方の免許をとってもらうので、小の人は中、中の人は小の追加免許をとりやすくさせる(必要単位数の減少などで)

 

感想

小中一貫校という発想はもともと民間によるものだ。しかし近年、この小中一貫校の成果というものが見え始めてきた。OECD学力テストで4年連続1位のフィンランドでも多くの学校が小中一貫校だ。こういった民間の動きに政府が遅れて制度化をするというような流れになっている。そういったわけで制度化といっても、裁量の範囲が非常に広くなっている。

Q.なぜ小中一貫校にするのか で、たくさんの理由があったが、基本は「生徒への教育的効果が高い」からであって、その他の意見というのは言わば飾りである。政府としてはとにかく「学力を高めたいけど、詰め込み教育をすると落ちこぼれができてしまうから、その支えが欲しい」というのが本心。中高一貫校にするメリットとして第二・第三に理由として考えているのは「中一ギャップを抑える」と「少子化」である。

「中一ギャップ」とは上で示したように、中学に上がる段階の生活の変化によるいじめや不登校が急増するという現象だ。これは別に中学だけでなくて高校でも大学でも社会人でもそうだと思う。この中一ギャップを軽減させ、9年間も関わる教師から見守られて手厚い保護を受けながら落ちこぼれないようにしよう!というのが狙い。実際小中一貫校にすることによるこの効果は大きいと思う。

少子化の部分も見逃せない。少子化によってつぶれていく小学校や中学校が増えていく中で、小中一貫校を増やすことによって学校全体の生徒数を高めることができる。一学年一クラスでも9年までいればそれなりの人数になり、行事や生徒の人間関係も育みやすく、政府からの援助も受けやすい。卒業生にとって今まで通っていた学校がつぶれるというのは何とも言えない感情なので、そういった効果もある。

中高一貫校にすることによって、先生自身の負担も長い目でみれば減ると思うので良いと思う。日本の小学校の学習指導要領と中学校の学習指導要領というのは非常に精密に作られていて、系統的段階的に生徒が学べるように工夫されている。しかし実際に生徒の身になると、「それは小学校の先生は教えてくれなかった」とか「もうその内容やったんだけどな」というようなことは良く起きる。先生の身としても、複数の小学校から中学に上がってくると、どの学校がどこまでやったのかどうかというのに苦労すると思う。大学教授は高校の授業を、高校の先生は中学の授業を、中学の先生は小学校の授業を批判したがると言うが、実際にどちらもやることによって解消される部分ではある。

デメリットとして僕が一番に考えているのは、いわゆる「中一ギャップ」がないことだ。これはメリットの部分として上げられているが、大きなデメリットにもなる。それは僕自身が「人間が一番成長するのは、環境が変わったとき」と思うからだ。

たくさんの小学校の生徒が集まり、中学校で初めての人と隣の席になるというのは生徒にとってはかなり大きな負荷となる。しかしそれこそが生徒自身の成長を助けるものだと思う。

もう一つ大きなデメリットとして、答申内でもあげられているが、「最上学年としての自覚を持たせる期間が一つ失われる」ということだ。小学校6年生と中学1年生というのは、中学1年生の方が年上だが、小学6年生の方が大人である。これはその学校の最上学年としての自覚(先生から良く言われるが)を無意識のうちに小学6年生が持っているからである。僕は教育実習で中高一貫校に行ったけど、受験のない中学3年生というのは気が抜けているし、他の学校の中学3年生よりも精神的に幼いなと感じた。まわりを見渡せば自分よりも下の学年しかいない環境で、リーダーシップといった能力が育まれる。小中一貫校はその機会を一つ失わせる。これは大きな損失だと思う。

また体育祭や文化祭などの行事でも、一番盛り上がるのはどの学校でも最上学年だし、大抵の人は最上学年になってその学校が好きになる

デメリットもあるけれど、結局数字ででる結果というのはプラスのものが多いので、今後は小中一貫校が主流になっていくと思う。大学でも小・中・高全ての免許を取る人が増えてるし、大学側も促していますし。

 

中教審答申資料の概要と感想はこちら

中教審答申要約&感想 - Yukihy Life

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