Yukihy Life

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中教審の到達度テスト・高大接続(大学入試)に関する答申の要約と感想

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 数日前にニュースになりましたが、文部科学省の諮問機関である中央教育審議会(中教審)が12月22日に出した答申についての要約と感想を書きたいと思います。

原文はこちらのページからいけます。

新しい時代にふさわしい高大接続の実現に向けた高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革について(答申)(中教審第177号):文部科学省

 

要約

この文章は、高大接続。つまり高校の教育と大学の教育をつなぐ大学入試のあり方をどのようにしていくかという非常に大切な部分に関しての文科省の方針が見られます。

文科省がどのような子どもを作っていきたいのかを簡単にまとめると

・知識や技能のみを持ち合わせたいわゆる頭でっかちなものでなく、「思考力・判断力・表現力」という能力を重視するよ

・全ての高校生に最低限の知識は身に着けてほしいよ。

・英語は「読み聞き」だけでなく「書き喋り」いわゆる四技能重視して、国際的に有能な人材を育成するよ

といったものです。

そのために大まかな方針としては、

①大学入試センター試験に変わる試験を導入するよ

②大学に行かない人は別の試験を用意しましたのでそちらを勉強するように

③その変わる入試試験に合わせるために、高校の学習指導要領も変えていくよ

④大学側も新たな入試試験に合わせてアドミッション・ポリシーを決めよう

といった感じです。原文の中でも強調されていますが、高大接続をスムーズにするためには、入試制度のみの変更だけでなく、高校の教育、大学の教育というものも変えていく必要があります。

それぞれに関して見ていきましょう

 

①大学入試センター試験に変わる試験の導入

現在まで、大学入試はセンター試験というマーク式の一発試験で行われていました。しかしこの方法では不確定要素によってかなり点数が左右されますので、センター試験の変わる試験として、大きく「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」というものを導入します。主な変更点としては、まだ確定ではないですが

・大学入学希望者は全員受験(これは変更点ではないですね)

・解答方法はマークのみ→記述も入れる

・「知識・技能」中心の問題→「知識・技能」と「思考力・判断力・表現力」などの能力が測れるものも入れる(PISA型の試験をイメージ)

・点数で評価→点数を段階に分けて段階で評価

・会場に行って試験を受ける→コンピューターで答える(CBT方式)

・年1回一発勝負→年数回(2~3回?)

・英語は読み聞きのみ→民間の試験や検定を利用し、書く話すもバランス良く評価

・各教科ごとの試験→教科型だけでなく、総合型の試験を用意し、総合的な能力を見る

・平成32年度から段階的に実施

が主なところです。これはものすごい改革です。

 

②別の試験も用意しました

上に示した「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」だけでなく、新たなテストとして「高等学校基礎学力テスト(仮称)」というテストを作るそうです。このテストの位置づけとしては、上に書いた「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」よりも一段階簡単な問題で、高校生の学力を測ることを目的としています。簡単に内容を書くと

・対象者は任意である(できるだけ多くの人が受けるようにこれから検討するそうです)

・メインは選択問題だが、記述問題も導入するかも

・受験科目は「国語総合」「数学Ⅰ」「物理基礎」などの必修科目から選択受験

・「思考力・判断力・表現力」の評価よりは、その基礎となる「知識・技能」の問題を重視

・成績は段階で表示

・コンピューターで答える(CBT方式)

・年に複数回実施、期間は夏~秋にはやる

・英語は読み聞きのみ→民間の試験や検定を利用し、書く話すもバランス良く評価

・平成31年度から段階的に実施

 

③高校側の学習指導要領の変更

上の二つの試験や、文科省が目標とする子どもを育成するために、高校の学習指導要領や評価方法を見直していきます。基本的な方針としては、生徒が受け身でなく主体的に学んでいく方針を目指す。

・議題の発見と解決という能力を身に着けさせる学習・指導方法の充実

・英語の教育目標を「英語を使って何ができるようになるか」から「四技能に係る一貫した具体的な何か」に変更する

・社会生活を営むために力を取り入れる

・「思考力・判断力・表現力」が分かるような新たな教科を入れる

・大学の卒論のような「総合的な学習の時間」を充実

・特別支援教育の充実

まだまだ具体性が見えてこないところですが、新たな教科の導入など、文科省のセンスが問われてきそうなとこころが含まれているのは注目です。

 

④大学側のアドミッション・ポリシーなどの見直し

大学側へはいろいろあるようなので要点のみ書くと

・一般入試・推薦入試・AO入試の区分を廃止し、各大学のアドミッション・ポリシーに基づいた新たなルールを作る

・「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」を積極的に活用して、応募条件として求める

・「高等学校基礎学力テスト(仮称)」を活用する

・特定分野において卓越した能力を持つものや、年齢、性別、国籍、文化、障害、地域、家庭環境などに関わらず多様な背景の学生の受け入れ

・国は各大学のアドミッション・ポリシーの策定について法律上に位置づけるように検討

 

感想

以前から言われていた「到達度テスト」がだんだんと具体化されてきたと思います。センター試験を受けてきた世代からすると、一発勝負試験でその後の人生が大きく変わってしまう今の制度には非常に疑問を持ちます。「知識集約型」といわゆる「考える力型」の教育は結構議論が対立しますが、一発勝負型の試験があまり良く感じられないという意見は大多数を占めると思います。

この方で行うことのデメリットとしては3つ考えられます。

まずはコスト。複数回試験を行うので一発勝負よりもどうしてもコストがかかります。ただ試験の形としてCBT方式を採用しているのでそれに関しても大丈夫そうです。2つ目は毎回試験が違うということです。一発勝負なら(センター試験も追試はありましたが)問題はなかったですが、毎回の問題の難易度を全く同じにするというのは現実的に不可能です。このあたりは最新の統計技術とかを駆使していくのでしょうか。3つ目は段階に分けて評価をするということです。というかなぜあえて段階にするのでしょうか?そのまま1点刻みにしていった方が良い気がしますが、やはり毎回の問題の難易度を一定に保つことができないということが影響しているのでしょうか。TOEICも725点はC評価で730点からB評価ですがその差ってほとんど無いです。

文科省は様々なことに言及していますが、特に現在のAO入試、推薦入試が全く機能していないことに警鐘を鳴らしています。こちらの記事でも書きましたが、読了!「名ばかり大学生 日本型教育制度の終焉」 - Yukihy LifeもともとAO入試や推薦入試は、学力では測れない才能をもった子を入学させるものとして導入されました。しかし現在、この入試制度は、主に「経営困難な大学側が、入学者確保のために入試科目を減らすもの」として悪用されています。これは本来の使われ方ではありません。この政策により中間層の学力の生徒たちは、難関大に諦めた時点で勉強も諦め、AOや推薦を活用していきます。これは国全体の学力で見たときに大きな学力低下につながっています。こういった中間から下位にかけての子どもたちにも、高校で必修科目は勉強してもらいたい。そんな思いから「高等学校基礎学力テスト(仮称)」ができています。また今後、就活にも使われていくのではないかと思う。

④で、AO入試や推薦入試に変わる新たなルールとありますが、この「高等学校基礎学力テスト」を使ったアドミッション・ポリシーを作らせるようになったいくと思います。これにより全く勉強をしないで大学に入学する子が減るからです。

こういった文科省の新たな動きは批判に合うことが多いですが、僕自身はこの方向性が最善かなと思います。ただやっぱり心配なのが、高校の学習指導要領の変更により、高校で行うべき内容が増えすぎています。今までの内容に加えて「新たな教科」や「総合的な時間の導入」は時間的に不可能に近いです。プラス教員の負荷が増える内容なので、教員の負担の軽減も同時に進める必要があるなと思います。

 

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