大学受験で化学を勉強する方のために、どのように勉強するべきなのか、その「勉強法」と「おすすめ参考書」を書きたいと思います。
大学受験は、やみくもに勉強するのではなく、戦略を持って攻略していくようにする必要があります。僕は医学部生でも東大生でもなく、ただの平凡大学生ですが、部活動で勉強を始められたのは8月で人よりも遅れていたため「効率性」が求められました。そいった意味で、大多数の方の参考になるのではと思います。
このページは数ある大学受験勉強法記事の中でも、特に「どれだけ効率よく・無駄を省いて勉強するのか」という部分に着目していきます。
基本的に「独学」することを念頭に置きます。
化学と言う科目について
理科の中で、化学がどのような立場にあるのかを理解することは重要です。
この部分をおろそかにすると、誤った戦略を立ててしまい効率が下がってしまいます。
①化学は、「暗記」と「理解」の両方が求められる
イメージですが、物化生の暗記量を比率で表すと、だいたい
- 物理2
- 化学6
- 生物10
ぐらいだと感じています。物理は極端に暗記量が少なく、また生物は暗記量が多いような傾向があります。
その中で化学という教科はバランスが取れている。逆に言えば「暗記」と「理解」を同時に進めていかなければ、決して高得点は取ることができません。
だから何だと言われると困るのですが、このことを意識して学習していくことは大切になっていきます。高校3年生であれば、自分が暗記に強いのか理解に強いのかが分かっていると思います。弱点と思う部分をしっかり固めないと、安定した点数を取ることは不可能と言えます。
②構造化されている教科である
化学という教科は、主に次のような4層の構造に分かれています。
「基礎」というのは、教科書の最初にある原子モデルの話や、イオン化エネルギーなどの話で、本によっては「理論」に分類されています。
「基礎」の部分から「理論・無機・有機」へと分岐します。実際には重なる部分はあるのですが、理論・無機・有機の3つを別々に仕上げていくような印象です。下は、恥ずかしながら僕の模試の結果です。
これを見ると、時計回りにだんだんとグラフが拡大されているのが分かると思います。9月を見ると、問1が高いです。これは僕が問1の範囲を学習し終えたからであり、合計点数としては目標点に全く達していないのですが、上にあげた性質を考えると、途中経過としてはこれで良いということになります。
理論・無機・有機を一つづつ攻略していくことによって、最終的に合格点に達する。分野ごと攻略していきます。
③物理ほど、自分のレベルに合わせた参考書を使っていく必要はない
物理との比較になりますが、物理は同じ範囲でも、問題の難易度を1から10まで簡単に上げ下げできます。しかし化学は「暗記」がある程度を占めるため、そこまで幅広い難易度を作ることはできません(理論部分は除く)。よって物理ほど、問題集の難易度に敏感になる必要はありません。暗記部分はさっさと暗記をしてしまいましょう。
④化学は理科の中で最も受験生が多い
物化生地の中で、化学は一番受験生が多いです。
つまり最も参考書が充実している教科とも言えます。また、たまたま問題が難問であったとしても、受験生が多いため、不利になることは少ないです。逆に言えば有利になることも少なく、ローリスクローリターンな教科であります。
⑤得点調整はありました
センター試験は、物化生地での平均点の差が20点以上ついたとき、得点調整をする可能性があります。これは高かった点数を下げるものではなく、平均点が低かった教科を上げるというものです。化学は過去に得点調整を受けたことがあります。
⑥物理とも生物とも重なる部分がある
化学と言う教科は、将来的に物理とも生物とも重なる部分が出てきます。生物と物理は、一応“生物物理学”という範囲があるのですが、基本的に化学との繋がりの方が強いです。つまり理系に進むのならば、化学は間違いなく履修しておいた方が良いです。
大学受験ではとにかく情報が合否を左右します。その他志望校などの情報は
などで早めに効率良く集めることをオススメします。
勉強法
暗記と理解では、それぞれ学習の方法が違います。上に分けた部分の暗記と応用の部分を大まかに比で表すと、
(暗記:応用)
- 理論化学 2:8
- 無機化学 8:2
- 有機化学 6:4
ほどでしょうか*1。これらを意識しながら学習を進めていきます。
まず応用部分の多いところは、なぜその理論が成り立つのかを十分に理解し、ひたすら問題演習で頭の中を整理していいます。
暗記部分の多いところは、いきなり暗記を始めるのではなく、まず参考書を読んで「なぜなのか」の部分を試験にでなくても大まかに捉えていきます。その後、それらを意識しながら赤シートなどを使って一気にインプットしましょう。暗記の定着度はその単語の見た回数に比例します。なるべく早めから取り組んだ方が良いです。
参考書の使い方
物理とほぼ同じですが、信頼できる数冊を丁寧に使っていきます。
基本的に3周し
1周目 単純に読み進め、問題を解く。合っている問題の問題番号に斜線を引いていく
2周目 1周目で合っていてもいなくても、もう一度解く
3周目 以後間違っていた問題のみ解き、合うまで繰り返す
以上です。答えを覚えてしまっても、「なぜ正解なのか」という部分を頭の中で論理構成を組み立てて進めていきます。
暗記部分はリストなどにしておき、一週間に一度チェックをするというのがおススメ*2。一週間空けることで、忘却曲線の効果により時間を無駄にせずうまい具合に定着をしてくれます。回数を繰り返すごとに、期間を空けていきます*3。
受験直前などでは、
1周目 解く
2周目 以後間違っていた問題のみ解き、合うまで繰り返す
といった形で行っていくのがベストです。並行して行っている暗記部分も、徐々に完成させます。
参考書紹介
以下に目安のために難易度を示します。
難易度
★☆☆☆☆入門書レベル
★★☆☆☆センターレベル
★★★☆☆MARCHレベル
★★★★☆旧帝レベル
★★★★★最難関レベル
入門書
難易度★☆☆☆☆
おススメ度★★★
とりあえず、学校の授業もついていくのがキツイという方はこれからやるのをおススメします。物理の記事では入門書はかなり重要と言いましたが、化学の場合は必ずしも必要ではありません。学校の授業についていける方は難易度2から始めても十分理解できます。
このシリーズは非常に易しく書かれています。特に理論分野では、こういった入門書が後々の勉強効率に大きく影響してきます。無機・有機は使わなくとも、理論はここから始めるのが無難かもしれません。
難易度★☆☆☆☆
おススメ度★★☆
丁寧に書かれていることは間違いないのですが、かなり厚いです。レベルは上とほぼ同じか少し易しいぐらいなので、好みで選んでいただけるとと思います。
参考書
難易度★★☆☆☆
おススメ度★★★
形式 解説&問題
とりあえずこのシリーズを進めておけば間違いないというものです。学校の授業についていけている方はいきなりこれを読んでも良いでしょう。
入門書よりもあっさりした解説の後に、基礎レベルの問題演習がついているという形式で、ストレスなく進めることができます。
またこのシリーズの良いところは「暗記」と「理解」の部分が明確に分かれているところです。立ち読みするときに「無機」と「有機」の後ろのページを見てみてください。別冊で「最重要ポイント総整理」とあり、暗記部分のリストがあります。この本を使うことで、暗記部分の背景を本で理解でき、別冊で簡単に復習できるという、最も効率の良い勉強ができます。
このレベルの演習が、実践で一番生きるところです。センター試験ならば十分に対応できる力が身に付きます。
難易度★~★★★★
おススメ度★☆☆
併用問題集としてくくらせていただきます。学校で配布されるこういった問題は、難易度的にも題材的にも、圧倒的な網羅性があります。正直、これを配られたときから淡々と自分の中に定着させていれば、★5の難関大以外は困ることはないでしょう。ただこれを全て終わらせるのは物凄い労力が必要です。
この記事ではとにかく「効率性」を重視していますので、それに適した本があるのですから、そちらを使いましょう。内容としては素晴らしいものですが、目的に合わないのでおススメ度1にしています。
難易度★★★☆☆
おススメ度★★★
形式 問題
名前は「基礎問」となっていますが、入試に必要な十分な難易度があります。入試問題に近いかたちでの演習ができ、問題の難易度が低めな大学では、この問題集で十分に対応ができます。
本屋で立ち読みをする際に、解説の詳しさに驚いてください。一つ一つの問題に対し、まるで初学者に対応するかのように詳細に解説が付け加えられています。入試に役立つテクニックも豊富に取り入れられていて、入門書までで取り入れた知識を、違ったアプローチから定着させてくれます。とは言え、問題→解説の流れのものなので、基本的なことはインプット済み前提ですが。
難易度★★★~★★★★
おススメ度★★☆
形式 問題
難易度的には上のより若干高いところがゴールです。A問題B問題と分かれていて、基礎から応用までレベル的にも題材的にもかなりの網羅性のある貴重な問題集。旧帝を狙う人はB問題まで行いましょう。問題もクセが少なく、きちんと自分の能力を伸ばすことができる問題集です。おススメ度を2にしましたが、化学の問題集は本当にどれも素晴らしいので、好みの問題だと思ってください。
「基礎問」、そして後述する「重要問題集」この3つから自分に合いそうなものを見つける。そんな形で選んでもらえると良いです。決して2つも3つもやろうなんて思わないでください。
難易度★★★★☆
おススメ度★★★
形式 問題
ご存知問題集界のドンです。旧帝大を狙う人、MARCHレベルでも高得点を確実に取りたい方にとって必須のアイテムになります。この問題集の特徴は、“難易度の高い問題”の網羅度がずば抜けていることです。上の「標準問題集」などにあるような基礎的な問題と、解説を大幅にカットすることで実現しています。解説のカットはデメリットとなっているので、買う前に確認してくださいね。
この問題集を押すメリットはもう一つあって、それは「大多数の人が使っている」というものです。どの問題集を使っていても、「この本の知識だけで大丈夫かな?」というような不安って必ず襲ってきますよね。そういったときに、重要問題集の“網羅性”と“多数の人が使っている”という事実は、精神安定剤の役割を果たします。問題集の質としては、極論、化学はどれでも良いのですが、こういった面からこの本を推奨します。
難易度★★★★★
おススメ度★★★
形式 問題
名前に惑わされないでください。このレベルの問題種です。構成は「基礎問」と同じで、問題が終わった後に解説という流れです。問題としては網羅しているとは言えず、重問などの網羅系問題種を行った上でやるというのが良いです。
この問題集の最大の特徴は、その解説の詳しさにあります。レベルの高い問題種は、総じて解説を省略する傾向があるのですが、この問題種ではトップクラスの解説量があり、非常に価値のあるものとなっています。
難易度★★★★★
おススメ度★★☆
形式 解説
難易度★★★★★
おススメ度★★★
形式 問題集
圧倒的ボリュームと、高難易度を両立している。高レベルと網羅性を両立すると、どんな本になるのかというのが良く分かる。新研究は解説に特化した本であり、序盤から軌道論が出てくるなど、高校で習う範囲を逸脱しています。これは全て読もうとするのではなく、辞書的に活用するのが良いです。僕自身、大学に入ってから、高校生に教えるために購入したもので、学校の先生たちの参考書としても一役買っています。
新演習は問題集ですが、解説も詳しくあり安心して使っていけます。ただ問題数が多いので、かなりの期間を見るようにしましょう。
新研究と新演習は名前が似ていますが、対応しているわけではありません。それぞれ独立して使っていきます。
暗記
この本は暗記に特化した本です。その網羅性は圧倒的で、普通に学習を行っていては出会えないような用語も含まれています。ただここまでの単語レベルが、「普通の受験生に必要か」と言われれば必要ないです。一般的な大学は、上に書いた参考書と、志望校の赤本をやり込むことで、必要な単語は十分に身に付きます。
ただ大学によっては、ニッチな単語を攻めてくるような大学もあります。自分の志望校が果たしてどうなのかを調べ、毎年のように、知識量を問うような問題を出題するような大学だったら、この本で補強するのが良いです。
また、無機と有機に関して、「大学受援Doシリーズ」の別冊で行うのが良いと言いましたが、もしも学習をしていて知識量に不足を感じたら、この本の「無機」と「有機」のみやることをおすすめします。
まとめると、この単語量を使う対象は
・毎年ニッチなワードが出題されるような大学
・無機・有機に知識不足を感じた人
と限られます。地味に定期テストとかに役立つ本なんですけどね。
効率良く学習できるサイト(有料)
上までのは参考書ですが、最近ではスマホ・ PCでいつでも学べる教材が増えています。
その中でもダントツのクオリティ(&安い)のが下のスタディサプリです。
もし仮に、これから塾に通おうとしている方がいましたら、一旦スタディサプリをやってみることをオススメします。
塾というのは友達がいるなど非常にモチベーションを保ちやすいことが利点ですが、内容のレベルだけでしたらスタディサプリとほぼ同じなので、自分でモチベーションを保ってやれるという方でしたらかなり安いスタディサプリがおすすめです。
2週間は無料期間で、1ヶ月も980円なのでヘタは本を買うよりコスパ良いです。
勉強の流れのモデルケース
3つのケースにわけて、どの本を使っていくべきかの例を書いていこうと思います*4。
入門書から始めていますが、ある程度できる方はスキップして良いです。
①センター高得点&2次にも若干
これらをマスターした後、センターの問題集でしっかり演習することで、高得点はとれます。
②MARCHレベルの2次試験まで
+赤本
最後の「標準問題集」は、しっかりと点数を取りたかったら「重要問題集」に変えましょう。
③旧帝大レベル(東大・京大を除く)
+赤本
定番の流れです。物理と違って、重要問題集まできっちりやった方が良いです。
注:これらのモデルを見て「少ない」と感じる方がいるでしょう。他のサイトを見れば「これの後にこれ!」と6冊ぐらい参考書を薦めているものがありますが、それは受験生にとって「現実的」でしょうか?
受験生は決して化学だけを勉強している訳ではありませんし、正直それだけやれば点数が取れるのは当たり前です。
この記事はとにかく「効率性」を求めています。最小の参考書で最大のパフォーマンスを出すことを目的としているので、時間が有り余っている方は他の記事を参考にした方が良いかもしれません。
最後に
「独学」で勉強する人にとって、なによりも重要なのは情報だと思います。この記事のように、おすすめの参考書や勉強法を書いた記事というのはたくさんありますが、結局通っている学校や、先生との相性などで、別の参考書が思わぬ働きをすることがよくあります。
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*1:僕の感覚的なものですが
*2:一度というのは、リストの中身を全て覚えるという意味
*3:最初は一日おきぐらいから始めます
*4:申し訳ありませんが、あくまでモデルであり、実力や合格を保証するものではありません
*5:国語や英語は、勉強と、点数の反映に数か月の時差があります。これはモチベーションにはなりづらいですが、早めに対策しなと間に合わないということなので気を付けてください。実際僕は、国語は間に合わなくてセンター6割と撃沈です。
*6:僕はこの時点で物理・化学は60点ほどでしたが、勉強をした範囲が満点近く、やっていないところが0点に近いというものだったので、自分の勉強法に自信を持って進めました。