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Yukihy Life

ゆきひーによる日常生活をアウトプットするブログ 映画・TOEIC・教育ネタとだいぶ物理とWeb制作

【図解】電磁気学の本質であるマクスウェルの方程式の直観的意味を分かりやすく解説してみました

サイエンス 電磁気学
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対象:大学生
数式:あり
 
この記事は、マクスウェルの方程式の意味をなるべく分かりやすく書いたページです。偏微分の意味を覚えた大学生を対象としていますが、科学に興味があって、マクスウェルの方程式ってなんだ?と興味をもっていただいた一般の方も読めると思います。
 
物理学科などでは、一年生のときに習うと思いますが、一番の難関は電磁気学だと思います。まずはマクスウェルの方程式をざっくりと理解することで、教科書も読みやすくなるでしょう。
 

マクスウェルの方程式の概要

マクスウェルの方程式は、電磁気現象を表す式です。高校までの知識だと、電磁気学の基本的な方程式を「オームの法則」だと勘違いされている方がいるのですが、オームの法則のみならず、ファラデーの電磁誘導の法則や、ビオ・サバールの法則、キルヒホッフの法則など、全ての電磁気現象は、マクスウェルの方程式から導かれることです*1

 
また、昔は「光学」と「電磁気学」は別々に切り離されてきて発展した学問なのですが、マクスウェルの理論的予言、そしてヘルツの実験によって"光は電磁波の一部"とされてから、光学の現象である「光の回析」「光の干渉」などもマクスウェルの方程式の中に含まれています。
 
マクスウェルの方程式はたった4つの式ですが、この4つの式だけで僕たちの身の回りの電磁気現象、例えばスマホで電話ができたり、虹の発生原理や、空が青い理由、そもそも僕たちが原型をとどめて存在できる理由など*2、非常に広い範囲の事象を説明できるというのは、よくよく考えてみれば驚異的なことですよね。
イメージとしては、ニュートンの運動方程式の電磁気学バージョンだという印象です。
 

マクスウェルの方程式とは?

マクスウェルの方程式は、次の4つの式です*3
\mathrm{div}\vec{D}=\rho
\mathrm{rot}\vec{E}+\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}=0
\mathrm{div}\vec{B}=0
\mathrm{rot}\vec{H}-\frac{\partial \vec{D}}{\partial t}=\vec{i}
ここでE電場D電束密度B磁束密度H磁場です。ここまでは高校物理で習いますよね。
\rho_{(C/m^3)}(ロー)は電荷密度と言います。単位を見たほうが早いですが、単位体積当たりの電荷です。
\vec{i}_{(A/m^2)}電流密度です。これも単位を見たほうが早いと思いますが、単位面積当たりの電流です。
それぞれ馴染みがなくて分かりづらいという方は、「電化密度」と「電流密度」を「電荷」と「電流」に置き換えてください。この記事では数学的に厳密にやるわけではないので大丈夫です。
 
これらの意味を一つ一つ扱っていきたいのですが、その前に\mathrm{div}\mathrm{rot}が気になると思いますので、これらを簡単に説明します。数式を使った説明はしていません。ここではまずざっくりと絵で表します。
 

数学的準備

物理では、現象をどのように数学で表すのかが大切になっていきます。ここではまず\mathrm{div}\mathrm{rot}を簡単に表します。数学的に厳密なことは、別記事でまとめようかと思います。

\mathrm{div}(ダイバージェンス)

これはダイバージェンスと読み、日本語読みで「発散」と言います。発散なので、例えば\mathrm{div}\vec{A}があったとき、図としてはこんな感じをイメージしてください。

f:id:ftmaccho:20150312192800p:plain

なんか発散してそうでしょ。ちなみにこの図は正式には間違っていて、本当は\vec{A}の「増分」を表すものなのですが、とりあえずマクスウェルの方程式で出てくるのを表すのには、こんな感じのイメージで良いと思います。

\mathrm{rot}(ローテーション)

これはローテーションと読み、日本語では「回転」と言います。

ただ回転を表すのって、時計回りか、反時計回りかが必要ですよね。そこで、例えば\mathrm{rot}\vec{A}z軸に向いているとき

f:id:ftmaccho:20150312192824p:plain

その周りのxy平面の"右ねじの方向"、つまり反時計回りに\vec{A}の回転が生じていると定義します

f:id:ftmaccho:20150312192841p:plain

そしてxy平面に時計回りの回転を表したかったら、マイナスをつけまて-\mathrm{rot}\vec{A}とします。

f:id:ftmaccho:20150312192904p:plain

こんな感じで表します。
 
ここまでで注意しておかなければいけないのは、\mathrm{div}\vec{A}はスカラーですが、\mathrm{rot}\vec{A}は、それ自体ベクトルであるということです。これはなぜなのかは、別記事で説明しようと思いますので、今はとりあえずそんなものかと覚えておいてください。
 

マクスウェルの方程式の解説

数学的準備ができたので、いよいよ解説にうつっていきます。言っていることは意外と簡単なので、身構えずによんでください。
もう一度マクスウェルの方程式を書くと、
\mathrm{div}\vec{D}=\rho
\mathrm{rot}\vec{E}=-\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}
\mathrm{div}\vec{B}=0
\mathrm{rot}\vec{H}=\frac{\partial \vec{D}}{\partial t}+\vec{i}
E:電場  D:電束密度  B:磁束密度  H:磁場
\rho_{(C/m^3)}:電荷密度  \vec{i}_{(A/m^2)}:電流密度

でした。説明をしやすくするために、一部移項してあります。

一つ一つ見ていきます。

ガウスの法則 \mathrm{div}\vec{D}=\rho

この式はガウスの法則といいます。高校で習うクーロンの法則F=k\frac{ee'}{R^2}も、この中に含まれます。

式の意味は、\mathrm{div}のイメージ図と合わせると、このようなことを表現しています。*4

f:id:ftmaccho:20150312192922p:plain

これは高校まででみた、電気力線と非常に似ていますよね。というか、それを表しているのです。
まとめると、図のように電荷(\rho)があると、その周りに発散(\mathrm{div})するように、電場(電束密度)(D)が生じる。こういった解釈で良いです。
また、これは電荷の存在を表しているとも言えます。これは\mathrm{div}\vec{B}=0と比べると説明しやすいので、そこで説明します。

ファラデーの電磁誘導 \mathrm{rot}\vec{E}=-\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}

これはファラデーの電磁誘導の法則です。えっ、電磁誘導って、中学のときにやった、磁石を動かすと電流が流れるっていうあれ?そうですそれです。

どれ?って方のために簡単に言うと、下図のようにコイルがあったとき

f:id:ftmaccho:20150312192939p:plain

これに磁石のN極を勢いよく近づけます

f:id:ftmaccho:20150312192959p:plain

するとそのまわりに、右ねじの方向とは逆方向に電流が流れます。

f:id:ftmaccho:20150312193015p:plain

ちなみに、これは磁石を動かしていないと意味がなくて、コイルの中に磁石をおいても、動いていなかったら、決して電流は流れません。
 
これを式で表すと\mathrm{rot}\vec{E}=-\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}となる訳です。ちょっと説明しやすいように移項しますね。
\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}=-\mathrm{rot}\vec{E}
まず、左辺にあるのは、磁束密度(\vec{B})が時間的変化(\frac{\partial}{\partial t})をすることを示しています。

f:id:ftmaccho:20150312193043p:plain

そしてそれに対応するように、右辺では右ねじの反対方向(-\mathrm{rot})に電場(E)が生じる

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という意味です。\mathrm{rot}は右ねじ方向の回転を表すのでした。これにより生じたEが、電子があればそれに作用し、電流を流すということです。

磁場に関するガウスの法則 \mathrm{div}\vec{B}=0

この式は磁場に関するガウスの法則と言います。

これが一番説明しにくいです。まず\mathrm{div}\vec{D}=\rhoと似ていますね、これはこのようなものを表すものでした。

f:id:ftmaccho:20150312192922p:plain

これをそのまま\mathrm{div}\vec{B}=0で表すとこうなります

f:id:ftmaccho:20150312193806p:plain

ん?何もないところから磁束密度Bが発散してる?よく分からないものになってしまいました。
実はこれは発想が違くて、「何もないところから磁束密度Bが発散する」のではなく、「磁束密度Bがあっても、それは発散していない」ということを言っています。
 
ちょっとややこしいので回り道して説明します。電荷の時には、真ん中にプラスのものをおいて、周りに電場を発生させました。

f:id:ftmaccho:20150312192922p:plain

これと同じ磁場バージョンはというと、真ん中にN極のものを置けば、その周りに磁場を発生させるとなりそうです。

f:id:ftmaccho:20150312193835p:plain

ここで思い出してほしいのが、小学校の時に、磁石を半分に切ってN極とS極を分けてやろうと思いませんでした?でも実際はN極とS極に分かれなくて、小さい磁石にそれぞれN極とS極ができてしまいましたよね。

f:id:ftmaccho:20150312193848p:plain

つまりN極というのは、それ単体で存在することはできずに、必ずS極とセットで存在することになります。これは電荷のプラス、マイナスの関係と最も異なるところです。
つまりさっき書いた

f:id:ftmaccho:20150312193835p:plain

というのは間違っていて、というかありえなくて、S極とセットになります。

f:id:ftmaccho:20150312193923p:plain

そして磁力線は下のようになります。

f:id:ftmaccho:20150312193941p:plain

これは全体で見たとき、磁力線は「発散」していないですよね。全てS極に戻ってくるのですから。
長い説明でしたが、まとめると\mathrm{div}\vec{B}=0という式は「磁束密度(B)があっても、それは発散(\mathrm{div})していない0」もう少し言うと、「N極が単体では存在しない*5
つまり電荷に対応する「磁荷」というものは存在しないということになります。これがこの式の意味です。

アンペール-マクスウェルの方程式 \mathrm{rot}\vec{H}=\frac{\partial \vec{D}}{\partial t}+\vec{i}

この式はアンペール-マクスウェルの方程式と言います。

\mathrm{rot}\vec{H}=\vec{i}まではアンペールが見つけ、その後\frac{\partial \vec{D}}{\partial t}の部分をマクスウェルが追加して、より正しく普遍的に成り立つようにしました。
まずアンペールの法則について説明すると、\mathrm{rot}\vec{H}=\vec{i}は、\mathrm{rot}\vec{E}=-\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}にすごく似ていますよね。\mathrm{rot}\vec{E}=-\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}は、磁束密度(B)が時間的に変化(\frac{\partial}{\partial t})するとき、その反時計回り(-\mathrm{rot})に電場(E)が生じるというものでした。
よって\mathrm{rot}\vec{H}=\vec{i}は、「電流(密度)(i)が流れたとき、その周りの時計回り(\mathrm{rot})に磁場(H)が生じる」という意味です。

f:id:ftmaccho:20150312193958p:plain

これって中学のときにやったような?
 
マクスウェルが追加した\frac{\partial \vec{D}}{\partial t}の部分は、コンデンサーを考えると分かりやすいです。例えば図のようにコンデンサーがあるとして、

f:id:ftmaccho:20150312194018p:plain

コンデンサーの極板間は、直接つながっていないので、そこを電流(密度)iが流れることはありません。しかし電源を調整することで、その間の電場、電束密度Dを変化させることはできます。そして実験によると、この電場の時間的変化は、その周りの時計回りの方向に磁場を生じさせることが分かりました。

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これは式で言うと\mathrm{rot}\vec{H}=\frac{\partial \vec{D}}{\partial t}となります。つまり直接的に電流(密度)(i)が流れていなくても、その間の空間の電束密度(D)の時間的変化(\frac{\partial}{\partial t})は、まるで電流が流れているかのようにふるまい、そして右ねじの方向に(\mathrm{rot})磁場(H)を生じさせるということです。
 
\frac{\partial \vec{D}}{\partial t}は「変位電流」と呼ばれます。これは実際に電流が流れているわけではなく、あたかも電流が流れているようにふるまっているというところに注意してください。
基本的に、iによる寄与の方が大きいのですが、この影の薄い変位電流が、電磁波というものを予言します。すごく考え深く、超ワクワクするところです。
 
以上が、マクスウェルの方程式の解説になります。
 

まとめ

ちょっと文章が長くなったので、まとめます。マクスウェルの方程式
\mathrm{div}\vec{D}=\rho
\mathrm{rot}\vec{E}+\frac{\partial \vec{B}}{\partial t}=0
\mathrm{div}\vec{B}=0
\mathrm{rot}\vec{H}-\frac{\partial \vec{D}}{\partial t}=\vec{i}
は、それぞれ
 
①電荷(密度)(\rho)が存在したとき、発散(\mathrm{div})するように電場(電束密度)(D)が生まれる
②磁束密度(B)の時間的変化(\frac{\partial}{\partial t})が、右ねじと反対方向(-\mathrm{rot})に電場(E)を生む
③磁荷というものは存在しない(磁束密度(B)は、発散(\mathrm{div})しない(0))
④電流(i)と、電場(電束密度)(D)の時間的変化(\frac{\partial}{\partial t})が、右ねじの方向(\mathrm{rot})に磁場(H)を生む
 
ということをあらわしています。中学のときにやったオームの法則よりも、電磁誘導の方が本質的なんですね。
 
この4つの式だけで、電磁気現象が表せるって驚異的だよな…。マクスウェルさんすごい!
高校数学でわかるマクスウェル方程式―電磁気を学びたい人、学びはじめた人へ (ブルーバックス)

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 関連記事

*1:オームの法則は、実際は熱的なこともかかわってくるので、熱力学・統計力学の考え方も必要ですが

*2:電子的には、量子論でやる必要がありますが

*3:教科書などでは、積分形と微分形と、2種類で表現されていることがあります。問題を解くときなどで易しい形としては積分形なのですが、言葉で説明する際には微分形の方が簡単なので、この記事では微分形でいきます。

*4:[発展]繰り返しになりますが、これは最も簡易的なイメージであり、実際の\mathrm{div}の定義と比べると、必ずしもこのような形ではありません。\rhoに関しても、「電荷密度」という言葉通り、図のように一点に電荷が集中しているわけでなく、雲のようにぼんやりと電荷があるので、実際の図とは違くなっています。いずれにせよ、式を最も簡単な例で表したものと思ってください。]

*5:現在の話であって、将来見つかるかもしれない。もし見つかったら、この式の右辺は0でなくなります。